こんにちはPyQチームのkenkenです。
前回PyCon Taiwan(TW) 2019のインタビューにお答えくださったnao_yさんが、PyCon Singapore 2019に参加されたのでまたまたインタビューさせてもらいました。
今回も見所や発表内容などの現地での様子をたくさん伺ったのでぜひチェックしてください。
前回のレポート記事
blog.pyq.jp
PyCon Singapore 2019とは?
nao_yさんが参加されたPyCon Singapore 2019はどのような内容のイベントですか?
nao_y
PyCon Singapore(PyCon SG) はシンガポールで1年に一度開催されるPythonカンファレンスです。
日本のPythonカンファレンスPyCon JP と同様にPythonのコア技術、Web開発、データ分析・機械学習など幅広いテーマの発表が行われます。
シンガポールは東南アジア各国からアクセスが良いためか、マレーシアやインドなどからの参加者もいました。現地在住の方も含めると日本人の参加者は7人ほど でした。
nao_y
会場は、Republic Polytechnic(共和理工学院)でした。
Republic Polytechnicは2006年に完成した教育機関で20ヘクタールの敷地に7つの学部があり、およそ15,000人の学生が学んでいます。キャンパスをデザインされたのは、日本の建築家槇文彦氏だそうです。とても開放感のある作りでした。
近代的な素敵なデザインですね。会場までのアクセスはどうですか?
nao_y
シンガポール北部のウッドランズ(Woodlands)という地区にあり、シンガポールの中心部からはタクシーで30分程掛かります。PyCon SG 2019公式WebサイトでもタクシーまたはライドシェアサービスGrabの利用がオススメされています。
シンガポールという国について
nao_yさんがPyCon SG 2019に参加した理由を教えてください
nao_y
Pythonエンジニア仲間と「今年は海外PyConに行こう」と決めていたためです(台湾と違って 宿も仲間と同じところでした)。また、昨年のPyCon APACではじめてシンガポールを訪れて、いろいろな国の文化が入り交じっているところや綺麗な街並み、ご当地グルメが気に入ったことも理由の1つです。
nao_yさんが昨年のPyCon APACでシンガポールに訪れた時の記事
blog.pyq.jp
シンガポールは2回めなんですね。nao_yさんが好きになったシンガポールはどんな国でしたか?
nao_y
東京23区より少し大きい程度の国土の中に近未来的な高層ビル群、中華街、アラブ街とさまざまな表情があります。なんと、これらの地下鉄が数駅程度の距離で繋がっています。おもしろいですね。
シンガポールの綺麗な写真
美味しそうな料理屋さんの写真がありますね。シンガポールで思い出に残っているお料理はありますか?
nao_y
去年も食べたシンガポール名物の海南鶏飯です。とても美味しかったです。
PyCon SG 2019の発表について
カンファレンスの内容について伺います。PyCon SG 2019はどんなカンファレンスでしたか?
nao_y
PyCon SG 2019では、データ分析・機械学習 の発表の比率が高めでした。データ分析・機械学習系の分野に関心のある人にとっては興味深いカンファレンスだと思います。自然言語処理や時系列分析、データ分析基盤などの発表がありました。レベル感としてはPyCon JPやPyCon TWと同じく初心者から上級者までですね。個人的には「中級者寄りの初心者から 」という印象でした。
少し平均レベルが高かったんですね。どういう内容からそのように思われましたか?
nao_y
サーバーレスコンピューティングプラットフォームAWS Lambda の発展的な使い方や機械学習ライブラリPyTorch を使った自然言語処理における転移学習についての発表がありました。これらの発表はそれぞれのトピックについてをわかりやすく噛み砕いた解説でしたが、基礎的な内容は抑えていることが前提でした。その為中級者に近い内容だと感じました。もっとも言葉の壁があるので英語圏の方であれば初心者でもわかりやすい発表だったのかもしれません。
確かに機械学習の基礎的な内容を抑えられていない英語圏以外からの参加者には少しレベルが高い気がしますね
nao_y
ただ、VS CodeとMicrosoft Azureを使った機械学習の入門(An introduction to Python for Machine Learning with VS Code and Azure)などの発表もありましたので、機械学習の初心者も理解できる発表 もありました。
PyCon SGで披露された発表の他に見所はありましたか?
nao_y
PyCon TWのときにも話題にしましたが、PyCon SGもランチがとても美味しかったです。ビュッフェ形式で提供されて、6種類くらいの料理が並んでいました。また朝食やコーヒーブレイクでも3種類程度の軽食やスイーツがありました。思わず取りすぎてPyCon太りしてしまったかもしれません。
こんなに美味しそうなものを出されたら欲望に負けて食べ過ぎてしまいそうですね
PyCon SG 2019で印象に残った発表
ここからは発表内容について深く聞いていきます。nao_yさんが、PyCon SG 2019で印象に残った発表や、参加したことで得られたことがあれば教えてください
nao_y
印象に残った発表は、Liling Tan氏による「自然言語処理における転移学習についての発表」とRich Jones氏の「Zappaを用いたシンプルなサーバーレス開発とオープンソース開発 」です。
Transfer Learning in Natural Language Processing (NLP)
まずこの発表のテーマでもある「自然言語処理」と「転移学習」について教えてください
nao_y
自然言語処理とは人間が使う言語を扱う機械学習の一種です。転移学習とは、ある分野で作った学習済みモデルを、関連する別の分野の機械学習で利用する手法のことです。一般的に機械学習モデルの作成にはたくさんのデータが必要になりますが、転移学習を使うと比較的少ないデータで機械学習を行える場合があります。
Liling氏の発表では機械学習フレームワークPyTorchからGoogleが発表した自然言語処理モデルBERTを使って、文章生成や文書から欠落した単語の推測を行う方法が解説されました。
Liling Tan氏のスライド資料・講演動画
スライド:drive.google.com
講演動画:VIDEO www.youtube.com
自然言語処理や転移学習って難しそうなイメージですがどんな内容でしたか?
nao_y
言葉だけで表すと難解そうな印象を受けると思いますが、Liling氏のスライドは寿司をモチーフにした可愛らしいキャラクターを使って文章生成や文章の補完を説明していました。そのため自然言語処理が何をする分野なのかさえ抑えておけば内容を最低限理解できます。自然言語処理に興味のある方は資料にも目を通してみてはいかがでしょうか。
Zappaを用いたシンプルなサーバーレス開発とオープンソース開発
それでは、もう1つの印象に残った発表について教えてください
nao_y
AWSのLambdaなどサーバーレスプラットフォームをPythonから利用するフレームワークZappaの開発者であるRich Jones氏による基調講演です。
黒背景に大きく「Hello」と書かれたスライドから始まったRich氏の発表では、ZappaとAWS Lambdaを使った基本的なサーバーレスアプリケーションの作り方をすごい勢いで解説していきました。
Rich Jones氏のスライド資料・講演動画
スライド:https://rawgit.com/Miserlou/Talks/master/pycon-sg-2019/talk.html#0
※サイズが大きい為開くのに時間がかかります
講演動画:VIDEO www.youtube.com
nao_y
スピーディーではありますが、わかりやすいので今までAWS LambdaとZappaを使ったことがなくても開発の流れを掴むことができました。
AWS LambdaとZappaの話のあとは、どのような話題になったのでしょうか?
nao_y
AWS LambdaとZappaによるサーバーレス開発の解説を終えた後は、話題をオープンソースサーバーレスプラットフォームOpenFaaSへと移しました。これは、DockerやKubernatesが利用できる環境であればどこでも利用可能なプラットフォームです。Rich氏がOpenFaaSに関わる背景には、特定のクラウド環境にロックインされてしまう状況への懸念があるようでした。
オープンソースに熱い気持ちを持っている方なんですね。他に興味深い話題はありましたか?
nao_y
オープンソースの話題が終わってからは、新たなデータ共有ネットワークDatが紹介されました。Datはコンピューター同士を相互に繋いでファイルを高速かつ安全にやり取りでき、かつファイルのバージョン管理もできる新しいデータ共有の手段です。現在は、ファイルの保管や共有にクラウドストレージを使うことが多いですが、たとえばGoogle DriveからDropboxへの移動が面倒なようにクラウドストレージはユーザーに対してファイルの置き場所を強制します。Datを使うことでユーザーは自由にファイルの共有ができるようになります。ここにも特定のクラウド環境に固定されてしまう状況への懸念がみえ、まさしくRich氏はハッカーだと感じました 。
最後に、Rich氏の発表の全体的な感想をお願いします
nao_y
Rich氏のオープンソースへの強い思いはもちろん、1枚1メッセージの簡潔なスライドを400枚以上使ったスピーディーな発表スタイルもとても見応えがありました。
本日は為になる海外のPyCon情報をお教えいただきありがとうございました!
まとめ
今回も現地での興味深い話をたくさんお話いただきました。
PyCon Taiwan 2019のインタビュー時にnao_yさんが「発表テーマの傾向には各国の個性・そのときのトレンドが濃く出る」と語られたことが印象に残っていましたが、今回のインタビューで改めて開催国によって発表内容や方針に違いがあると分かって興味深く感じました。
参加するだけの価値はあると思うので海外のPyConに興味のある方は、参加を検討してみてはいかがでしょうか?