お客様
: 石本敦夫氏 @atsuoishimoto
聞き手
: 佐藤治夫 @haru860 : 清原弘貴 @hirokiky
Pythonをはじめたきっかけ
佐藤)石本さんがPythonを使い始めたきっかけはなんですか?
石本)もともと私はWindowsのアプリが専門でした。元は制御系のプログラマーで、それからパソコン系のパッケージ開発とか始めてて。なので基本はC言語系なんですね。それが1994年か1995年くらいにPythonが日本に入ってきはじめて。
佐藤)Python1 ですか。
石本)1.3か1.4くらいですね。当時、アメリカの雑誌の翻訳が日本で売ってて、それにPythonの記事が出てたんですよ。きちんとした解説をそれで初めて見て。そこからですね。
佐藤)なるほど。当初は仕事では使ってない。
石本)使ってなかったですね。
佐藤)使ってないのになぜ Python Japan をやろうと。
石本)当時、日本だとまったくPythonのコミュニティーはなくて。私、当時Pythonの日本語対応版を出してたんですよ。
石本)SJIS*1ってありますよね。SJISは2バイト目にバックスラッシュが入ってくるんですよ。だから日本語の文字列だとコンパイル通らない。当時のPython、まだUnicodeなかったから。
石本)日本語パッチ版とか、正規表現の日本語対応などをしてました。
佐藤)本家に送ってたんですか?
石本)本家には送ってないです。当時はSJIS専用のバージョンとかはやってくれないんで、日本語Windows版と銘打ってバイナリを配布してました。
佐藤)どこで配布してたんですか。
石本)それは自分のプロバイダが提供してるホームページ。
清原)古き良きインターネット感(笑)
石本)まだ当時、GitHubないし、SourceForge*2もないし。そのような無料で使えるサービスが当時まったくなかった。ホスティングは、月1,000円とか払って、10MBとか20MBくらいのホームページ領域を借りてという感じ。
清原)いるかも分からない人のために。
佐藤)お礼のメールは来るんですか。
石本)そうそう。
清原)いいですね。
石本)当時まだ、PythonのコミュニティやTwitter などもまったくないから。
清原)メールで。
石本)メーリングリストでやってたから。当時、筑波大学の人でPythonを使ってる人がいて、その人と一緒に。その人が日本語版を開発してて、その人は正規表現かな、日本語パッチを当てたりしてたかも。 そこから僕がそのプロバイダの有料のメーリングリストサービス使って立ち上げましょうかという話になりました。
清原)python.jp の前身のような感じで。
石本)python-ml-jpですね。
清原)ml-jp!
石本)それがスタートです。それが98年です。
佐藤)登録は何人ぐらいでしたか?
石本)200~300人ぐらいですかね。
清原)結構いますね。活発な感じでしたか?
石本)それほどでもないです。月10通、20通ぐらい。
佐藤)どういう内容がやり取りが多かったですか
石本)Pythonそのものについての使い方の質問が飛んでくるときもあったし。
佐藤)日本語うんぬんではなくて。
石本)はい。当時、Pythonやってる人たちだから英語はだいたいの人は読めただろうし。
清原)Google検索すると、メールアーカイブとかで古いメールがチラっと出たりしますよ。ウェブアーカイブ的で発掘できるのが面白いです。
石本)メールのログもずっと上げておくと、消してくれという連絡が来たりするんですが、特にアクセスもないから最近見れなくしました。
清原)消してくれという気持ちも分かる。
石本)あとMailman という、メーリングリストのサービスを使ってました。アーカイブするのにそのソフト使わないといけないんですが、Mailmanのバージョンが古くてバージョンアップできないんですよね。それもあって今は隠しておこうと思って。
python.jp を立ち上げたきっかけ
佐藤)どのようにメーリングリストから、python.jp を立ち上げようという流れになっていったんですか。
石本)ドキュメント翻訳プロジェクトをやりたかったんですよ。それで一応、公開先が必要じゃないですか。プロジェクトを立ち上げて、python.jpのウェブサイトを立ち上げてここに掲載しましょうと。ドキュメントの翻訳を始めましたが、当時、一番働いたのが、増田さんという方。あの人がおそらく当時のPythonのバージョンの半分ぐらいを翻訳しました。
佐藤)すごいパワーですね。
清原)すごい。 Django のドキュメントの翻訳も増田さんですけどね。
石本)そうそう。速いんですよ。私が3分の1か4分の1ぐらいかな。あとはみんなが少しずつ。
佐藤)当時は、Pythonはどのような使われ方してるんですか
石本)当時はZope*3がまだ結構人気があったんですよね。2000年代前半のウェブアプリケーションの本流は、まだPerlかJava、あとPHPが人気出てきたぐらいの感じ。PythonはWeb言語としてはかなり出遅れてたんですね。Zopeが出たのが98年か99年ぐらいだけど、やはり動作が重い。そして難しいし。そこでやはりPHPとかPerlが人気に。
清原)手軽ですしね。
→ 次回は、 Pythonがなぜデータ分野で強いのか?の真実 です。
目次
- 【目次】石本敦夫氏に聞く、Pythonの歴史とこれから
- 【その1】Python Japanをはじめたきっかけ
- 【その2】Pythonをはじめたきっかけ
- 【その3】Pythonがなぜデータ分野で強いのか?の真実
- 【その4】PEPとPython2、Python3の話
- 【その5】Python自体にコントリビューションするには?
- 【その6】強みを掘り下げていこう
- 【その7】プログラミングは独学で覚えられる「コスパの良い」技術
PyQオフィシャルブログでは『Pythonエンジニア列伝』を不定期掲載します。Pythonに関わっているさまざまな人にインタビューし、これからプログラミングを学習する方にエンジニアが普段考えていることや取り組んでいる活動などを紹介していきます。
(まとめ:大村亀子 @okusama27)